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それは雷さまが怖いからじゃねぇのか。
でも確かに。レジで「五目おにぎり六十円です」と明るく言われた時、茶を飲んでいいだけくつろいでおいてそれでは、なんだか安すぎて不憫な気がした。そう、なんかくつろいだんだ、よくわからないけど。なんだかんだで、楽で居やすかった。
結局ぼくは、いなり寿司と五目おにぎりと赤飯とまんじゅうと団子を二個ずつ、母さんの土産に買ってしまった。きっと母さんは父さんに分けずに全部食ってしまうから、また太ると思う。
そして、レジで金を払おうという時、ぼくは見てしまった。ぼくだけにしかわからない、ある衝撃的なものを。
五目おにぎりを食っていたテーブルからは死角になっていて見えなかった、カウンターの後ろにあったその物体。それは、水の入った透明な金魚鉢に入れられた、金魚鉢ギリギリくらいに大きい、ガラスの地球だった。
考えるより先に言葉が出た。
「あの・・・・」
「はい?」
「これ、何ですか?」
「これ? 金魚鉢に入った地球です」
「そうだけど。なんで」
「タロウさん、八郎沼に行ったことありますか?」
「そりゃあ、地元ですから。ていうか、今もその八郎沼の帰りなんスけど」
「そうなんだ。あのね、八郎沼のスイレンの下には、地球が沈んでいるんですよ、ふふ」
「!」
店を出るとき、勢さんが何かしゃべっていたけど、内容を覚えていない。
確か微笑んでそれを言ったはずの、あの人の顔も覚えていない。
その時、ぼくの中にはパーンッという空雷みたいなのが鳴って、ただ心がざわざわして、それがずっと消えなかった。
家に帰って母さんにいなり寿司を渡しながら聞いてみたけれど、やっぱり、そんな店は知らないという。
それからのぼくは、結構たいへんだった。
普段なら浮かんだ思いは出来事に紛れて簡単に流れていくのに、消えない。
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