これほどに重いものはないのだから

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時子は、ふうと息を吐く。 「美結ちゃん、ごめんね。だけど終戦七十年まで待たしてな。せめてもの強がりだ。亮太が高校生になったときにやらせてくれ」 美結は、分かりましたと返す。 「私のことも大事にしてくれるお義母さんに反対なんかしませんよ。お義父さんも勇二さんも同じです」 ばあちゃんは、そんな生涯を生きた。 僕が高校生になって終戦七十年を迎えた夏の暑い日、一太おじさんの葬式が行われた。 ばあちゃんとじいちゃんと父さんと母さんと僕。 それだけが一太おじさんの葬式を見守る。 ばあちゃんは泣いていた。 ばあちゃんだけが泣いていた。 ばあちゃんは、戦後七十年、何を思って一太おじさんを待っていたのだろう。 この日になるまで、ばあちゃんは一太おじさんの話を沢山してくれた。 五年も一緒にいられなかった一太おじさんの話を。 僕にばあちゃんの真似は出来ない。 七十年も待ち続けるなんて出来ない。
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