これほどに重いものはないのだから

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「兄ちゃん、ごめんな。待たしたな……」 一太おじさんのの遺骨が入っていないお墓にばあちゃんは話しかける。 じいちゃんが、「二人にしてやれ」と父さんと母さんと僕を連れて離れた。 僕は、じいちゃんに聞いてみる。 「ばあちゃんは、どうしてあんなに待てたのかな?」 「おかしいことじゃない。待ち続けて亡くなった人も、今も待ち続けている人もいるはずだ。大事な人を待つことはおかしいか?」 僕は首を振る。 「おかしくないよ」 「ばあちゃんは、大事な家族の帰りを待った。待てたのは、幸せに生きてこられたからだよ」 僕は、ばあちゃんの方を見る。 お墓に抱きついていた。 ばあちゃんの心には傷がある。 一太おじさんを失ったことを認めたくなかったこと。 きっちり死んだと思っていても待ち続けたこと。 家族が応援をしたから、七十年も認めれなかったのだろう。 旦那がじいちゃんで子供が父さんで優しさに包まれたから認められなかったのだろう。 僕は、今日のばあちゃんを忘れない。 七十年経って、やっと「おかえり」を言えたばあちゃんを。 了
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