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部屋の中は、思ったより殺風景だった。
何の飾りつけもなく、キッチンは必要最低限のものしかない。
茶箪笥の中は、ほんの数枚の皿しかないようだ。
それは部屋も同じだった。
テーブルと洋服ダンスとテレビだけがある。
シンプル、と言えば聞こえがいいが、女の子の部屋にしてはかなり寂しい。
「何もなくてすみません……」
「いや、大丈夫だよ。テレビでも見ようか」
「……すみません。テレビ、壊れているんです」
申し訳なさそうに、彼女は言った。
きっと、お金がなくて買い替えられないのだと、軽く考えていた。
床に座ると、俺は買って来た酒やつまみをテーブルの上に広げた。
俺も彼女も酒を飲み、つまみ、他愛もない話をした。
しばらくして酒も周り、俺と彼女はいい感じになった。
俺は彼女の口元に寄ると、彼女は嫌がらなかった。
だが、いざキスをしようとした瞬間、どこからか変なニオイが香って来た。
焦げ臭いような、生臭いような、かなり不快なニオイ。
さすがにそのままキスは出来ず、俺は彼女に謝った。
彼女は怒らなかったが、結局それまでだった。
彼女は自分の布団を敷き、俺に使ってくださいと言ったが、さすがに女の子を畳の床に寝かせるわけにはいかず、俺が畳の上で寝る事にした。
彼女は申し訳なさそうに「ありがとう」と言って、そのまま電気を消した。
「はー、何やってるんだろ」
薄暗い部屋の中、仰向けで横になると天井が目に入った。
よく見れば、天井には斑模様のように黒いシミが広がり、そのシミを追って行くと壁にも黒いシミが広がっていた。
何故、気づかなかったのだろうか。気味が悪いな。
そう思いながらも、いつの間にか俺は眠りに落ちていた。
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