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汁男達には識別番号すら与えられなかった。「識別」する必要がないからだ。汁男はどこまでも汁男であり、股間に血液を集中させ、精を放つ以外のいかなる個性も要求されない。汁男が個性を持つことは、ユーザの欲情を阻害する要因となりうるからだ。汁男はどこまでも透明で、匿名的な存在であり、思考や感情が求められることはないのだ。
朝に目覚めて眠るまでの間、彼は休みなく女性キャラクターを陵辱し続けた。そのような作業(それは彼にとって、作業としかいいようがないものだった)には常に嫌悪感を覚えていたが、だからといって辞めるわけにはいかなかった。
汁男はどこまでも汁男であり、汁を排出する以外にできることがない。汁男は汁男であることを辞めた途端に、その存在そのものを失うのだ。
来る日も来る日も彼は汁を出し続けた。汁男の肉体は汁を分泌するために特化して作られており、現実の男よりも遥かに強靭な精力を与えられている。
だが、生殖能力はない。彼らの分泌する汁は、見た目も匂いも味も成人男性の汁そのものだったが、本来それが持っているはずの、最も重要な機能は奪いとられていた。
彼は「仕事」の合間に、自分の存在意義について考える。
(どうして僕は産まれたのだろう?
なんのために生きているのだろう? )
そんなふうに、密かに思った。
それは汁男の世界では重大な思考犯罪だった。
発覚すれば、即座に削除されるだろう。
それでも彼は、思いを止めることができなかった。
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