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#02
その日、彼は勃たなかった。
それは汁男である彼にとって「死」を意味することだった。否、それよりももっと悪い。機能を失った汁男は「削除」される。存在自体がなかったことになり、初めからいなかったものとして扱われるのだ。
いかなる記録も、痕跡も残されることはない。それは徹頭徹尾、完全なロストだった。
他の汁男達は、彼に少しばかりの同情を寄せた。ユーザから見えないところーーモニタに映らない死角ーーーで、彼の肩をぽんぽんと叩き、元気付けようとする汁男もいた。
だが、そんな汁男たちも、すぐに「仕事」に戻った。
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