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 彼は予想通りの結果だと知ると、怒らず、飽きれもせずに微笑んだという。単なる寝坊だとわかって安心したのだ。  画面の灯かりが周りの迷惑になるかもしれないのですぐに電源を切るも、その際に軽快なメロディが鳴ったので、ドギマギしてしまった。  ごめんなさい……。  他の客に心の中で謝りつつ携帯電話をしまい、スクリーンに目を向けたところ、タイミングよく派手な爆発が起きたので、身体を震わせてしまうほどに驚いた。  そのときに観たのは洋画で、大人気アクションもののシリーズだった。前々からとても楽しみにしていて、一人でも観に来るつもりだった。  内容は期待以上の面白さ。これは私も同感だが、シリーズ随一だ。  最後尾の席でも迫力は申し分なく、後ろの人を気遣う必要が無いので、案外快適だったとか。  これで隣に彼女がいれば最高だったと、彼は残念そうに言っていたよ。  ちなみに二人の関係だが、そのときはまだ仲の良い友人、単なる幼なじみに過ぎなかった。マイペースな姉と気遣い屋の弟、親分子分、猫と子犬のような、そんな関係だった。  猫に例えた彼女だが、彼いわく、眠ると熊に変わる。一度眠れば冬眠中のように起きないのだそうだ。     
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