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 冒頭のインパクトあるシーンが終わると、主人公の日常をたどる回想へと切り替わる。小説で言えばプロローグが終わり、第一章の始まりだ。  物静かで、寂しげで、儚い雰囲気が流れる。それもそのはず、主人公は愛する家族を失い、孤独なのだ……というシーンがしばし続いた。  決して退屈ではないものの、どうしても落ち着いてしまうので、彼は今のうちにと喉をうるおし、食欲を満たす。もちろん、目は常に字幕を追っている。  新発売の味のポップコーンとコーラの相性が今一つだとか、彼女は今頃大慌てで準備をしているのかなぁ、といった映画とは関係の無いことを、意識の片隅でアレコレ考えていたところ、字幕の下、最前列の席で、なにか黒いものが現れた気がした。  ちょうど場面が切り替わったので、字幕を追っていた目をそちらに向けて確認したところ、それは子供の顔だった。逆光になった上半分だけの顔が、背もたれ越しにこちらを覗いていた。  派手なシーンが終わった後だから退屈しているのかな、自分も似たようなことをしたかもしれないなぁ、なんて自分の幼い頃を思い出して、つい、にやけた。     
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