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すると子供の顔が引っ込んだ。タイミングが良かったので、見ていたことや、笑ったのに気づいたのかもしれないと、少しばつが悪くなった。だがすぐに、親に注意されただけかもしれないと思い直し、映画に集中した。
それからしばらくすると、また視界の下のほうで黒いものが現れた気がしたので、つい見てしまう。
また顔がある。多分、同じ子供だ。先ほどと同様に上半分だけ覗かせていた。
二度目ともなるとさすがに、落ち着きの無い子だなぁ、と思い眉をしかめた。自分もたいがいだったから他人のことは言えないが、それにしてもマナーがなっていないと、親はなにをしているのだろうと気になった。
こちらをじっと見つめる視線が鬱陶しかったが、まだ子供なのだからしょうがないと無視をしていた。
だがそのとき、ふと、ある疑問が頭の片隅を過ぎった。
あれ? あの子、二列目にいなかったか……?
気になって注目するも、顔はもう無かった。
見間違えたかな、とスクリーンに視線を戻してまもなく、また黒いものが。どうしても気になるので再度注目すると、やはりそこに子供の顔があった。しかしそれは、一列目でも二列目でもなく、三列目の、しかも右端の座席だった。
これにはさすがに困惑した。席に座っていることもできずに歩き回っているじゃないか。まだ幼いとはいえ、マナー違反にもほどがある。誰かが注意しなければ。
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