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 上半分だけの子供の顔は半透明で、前の席に座っている人の頭に重なっていた。後頭部にも顔があるかのような光景で、ひどく不気味に見えた。その顔は無表情で、なんの感情も見られない。血の気も感じられない。何故なら色が無いのだ、モノクロだ。だから眼も黒い。インクで満たされたかのような小さな穴が二つあるだけだった。それが、覗き込むようにこちらを見つめていたのだ。  怖くてたまらなかった。目を瞑りたかった。顔を逸らしなかった。逃げたかった。  しかし身体は言うことを聞かない。一切動かない。なにもできず、あっちへ行けと、消えてくれと懇願することしかできなかった。  するとまた、子供の顔が引っ込んだ。消えるように、すーっと……。  願いを聞き入れてくれたのだと、いなくなってくれたのだと喜ぶも、身体は動かないままだった。そのことに気づき、どうしてかと苛立ちを覚えたところ、まっすぐ前を見つめるように固定されていた視線が勝手に下を向き、開いた足の間から浮き上がるように現れた、子供の生首を見た。  それは、腹から胸へ滑るように登ってきて、お互いの目の高さが同じになると止まり、にやぁ、と笑った。昔を思い出して、ついにやけてしまったかのように。  そして、消えた……。  彼は悲鳴を上げた。絶叫して、泣き喚いた。  それは無自覚だった。気づいたときには大声を発していて、その瞬間に声が出せることや、いつの間にか金縛りが解けていることを知った。     
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