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当然、慌てて逃げ出そうとするも、それは叶わなかった。何故なら、周りの観客たちも一斉に悲鳴を上げ、彼よりも先に席を立ち、出口へと押し寄せたからだ。
皆、我先にと強引に出て行ってしまった。
耳をつんざかんばかりの悲鳴の嵐と、自分以外の観客全員が一斉に立ち上がった光景に驚いた彼は、咄嗟にその身を硬直させてしまった。そのために逃げ遅れて、気づいたときには独り取り残されていた。
そのことを理解した彼は、思い出したようにまた悲鳴を上げた。大慌てで席を立ち、出口へと走った。途中で足がもつれて転んでしまったので、這うようにして外へ出た。
受付のあるホールに行ってみれば、彼よりも先に飛び出していった大勢の人々が、数人の係員を取り囲んでいた。皆、一様に青ざめた顔をして、子供の顔が、生首が、と口々に訴えていた。
どうやら、あれは、全員を観ていたらしい……。
【完】
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