32人が本棚に入れています
本棚に追加
マスターは私の手から代金を受け取りながら、おじさんに向かって笑顔を向ける。
「このかわいいお客さんはね、いつも1杯だけなんですよ」
「もったいないなぁ。おごってあげるからもう1杯どう?」
その人の良さそうなおじさんは、悪意なんてなさそうだった。って言っても、私にとっては悪意だろうが善意だろうがどっちでも構わない。
「せっかくですが、私、お酒あまり飲めないので」
それだけを言ってお辞儀をしてから、ドアを押し開けた。
バーのドアは重い。
でもそのおかげで、非日常的な雰囲気が作られているような気がする。
私は日常と非日常の境界線を越えて、ラッシュ時間を外した駅へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!