オレンジ色に染めて。

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マスターは私の手から代金を受け取りながら、おじさんに向かって笑顔を向ける。 「このかわいいお客さんはね、いつも1杯だけなんですよ」 「もったいないなぁ。おごってあげるからもう1杯どう?」 その人の良さそうなおじさんは、悪意なんてなさそうだった。って言っても、私にとっては悪意だろうが善意だろうがどっちでも構わない。 「せっかくですが、私、お酒あまり飲めないので」 それだけを言ってお辞儀をしてから、ドアを押し開けた。 バーのドアは重い。 でもそのおかげで、非日常的な雰囲気が作られているような気がする。 私は日常と非日常の境界線を越えて、ラッシュ時間を外した駅へと向かった。
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