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「あ、もしもしタカシ?ああ、さっきはどうも」
私の推理通りであれば、今頃焼き鳥好き彼女とよろしくやっているであろうタカシは、2コール目で通話ボタンを押したらしい。ハヤシは口に人差し指を当て、携帯電話を操作しフリーハンド通話に切り替えると、冷めた焼き鳥の上にそっと置いた。
『で、どうしたんだよハヤシ?』
しんと静まり返った室内に響く、タカシの声。
「さっき言ってた彼女のことがちょっと気になってさ。焼き鳥好きの彼女って、セノアカリって子?それとも、もう一人の方?」
ハヤシ、なかなかに頭のキレる子。カマをかけやがった。
『げ、なんだよお前知ってんのかよー。一応、学校じゃアカリが彼女ってことになってんだから黙っててくれよー?ったく、あいつも黙って大人しくしてりゃ顔はいいのによー。俺のためにって編んだマフラーとかもう最悪だぜ?ネタとして写メっといたから後で送ってやるよ』
『ちょっとー、タカくん何の話してるのよー?』
遠くから聞こえる、女の声。疑う余地なく、タカくん二股確定。
『おっと、やばいやばい。今日はサチコの日なんだよ』
タカシの囁き声が響くと、アカリは顔をぐしゃりと歪め、声を出すことなくただ涙を零した。
「ああ、そうか。よーく分かった」
ハヤシは答えると、無言で泣きじゃくるアカリの頭にポンと手を乗せ、反対の手で携帯電話を持ち上げた。
「死ね!このゲス野郎!」
ピ、と通話を切り、パタンと携帯を閉じ、スッとポケットに滑り込ませる。
「ねぇ、セノさん。このマフラー、どうする?」
袋からマフラーを取り出し、タカシ曰く最悪なその柄を広げて、ハヤシはアカリに問いかけた。
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