i'm in love. in the bar

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 何もかもが逆境の中、オレは肉親獣に捕食される小動物の気持ちがちょっと解った。  だがそれが、この場を円満に収める解決策を見出す結果となり、オレはそれを彼女に伝えるべく、彼女をじっと見つめた。  似合いもしない、素敵なオジサンのレッテルなんざゴミ箱にぽいして。  かといって仕事モードともまた異なる、何も “作る” 事の無い自然体のオレのままで、彼女に語り掛けた。 「もし良かったら、明後日オレとデートしてくれませんか?」  オレが見出した策。  それは、この成り行きまかせの状況とは正反対とも言える、ちゃんとしたプロセスを踏む事だった。  まずはお友達から始めませんか?的な。  そしてこの策は、彼女が見てるであろう甘い甘い夢(ワンナイトラブ)とは真逆の、どん臭くて地味な誘いではあるが、それを提示するオレ自身がそうだから仕方がないのである。  それを聞いた彼女は、ぽかんとした表情を浮かべていたが、程なく頷いた。  その端正な顔に、大魔王の笑みとは全く異なる、初めて目にした眩いばかりの笑みを浮かべて。
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