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夕刻過ぎ──
普段は静かなマンションの、角にある一室のインターホンが鳴り響いた。
「あれ、おかえり──…ぃ…」
「──…」
ドアを開けた瞬間、お互いに固まっていたのがよくわかる。
「あ、れ……」
疑問顔なあたしは目の前の訪問者を足先から頭の先まで何度も首を往復させて眺めた。
ビンテージジーンズを履き慣らしたやけに長い足──
上は普通にTシャツとチェックのシャツを重ね着して、顔には伊達眼鏡を掛けている。
「あれっ!?」
目の前のそいつは大きく驚くとあたしの顔と部屋番を繰り返し見て戸惑っていた。
そいつはあたしにゆっくり指を指す。
「晶さんって、おんなっ!?」
「ええ…たぶんね」
あたしは腕を組んで言い切った。
「背、高いね…」
「ありがとう。よく言われます」
タッパ、170あるからね…
沈黙が続く中、玄関口で腕を組んで考える。
「取り合えず、中にどうぞ」
入り口で立ったままも何だから、あたしは玄関の中へ彼を招いた。
目の前にいるのはたしか…
本名
柏木夏希(カシワギナツキ)
芸名
藤沢聖夜(フジサワセイヤ)
あたしが居候しているこのマンションの主。叔父の今井健吾が経営する芸能プロダクションの人気若手俳優だ──
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