1章 出逢いは突然に

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・ 芸能関係者ではあるけれど、健兄は仕事とプライベートは完全に切り放した生活をしている。だから今まで事務所のタレントを家に招いたこともなければ芸能人なんてあたし自身会ったためしもない── まさかこんな展開でトップスターと住むことになろうとは、思ってもみなかった… 「で──…そろそろ俺が泊まる部屋に案内してもらえる?」 夏希ちゃんは足を組んだままこちらに伺いをたてていた。 あんたはアラブの王様か?ってなくらい、数ある愛人宅に入り浸りな叔父の健兄は殆どこの家には帰ってこない── 二人きりなのはほぼ確実。 「あ、もしかして何か勘違いしてるかもしれないけど…俺、あなたに手は出さないから──」 「……」 「そっちは充分間に合ってるし」 「……」 ちとムカつくなコイツ? 考え込むあたしを余所に、下手に出ながら微妙に上から目線じゃないすか? そう思いながら家の案内を済ませると夏希ちゃんは手を差し出した。 「取り合えず、これからよろしく──」 「……」 出された手を握り返すと夏希ちゃんはジッとあたしの胸元を見る。 「短い間だからあまり言うことはないけど──家に居る時でもブラくらいは着けてもらえる?」 「……──」 あたしは自分の胸元に目をやった。 「小さいから必要なくない?」 「……でも、乳首は気になるから」 「…言いながら顔赤いけど、手…出さないっしょ?」 「……」 ありゃ、余計に赤くなったけどダイジョウブかなこりゃ…? そんなこんなで始まった新たな居候生活── あたしは部屋まで案内するとマンションのスペアキーを彼に手渡した。 「……リボンついてる…」 鍵に付いていたキーホルダーを眺めて呟く。 「ん?…気に入らない?」 「流石に男がリボン付きのマウスはないでしょ?」 「じゃ、あたしのと交換する?」 あたしは自分のキーを差し出した。
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