1章 出逢いは突然に

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・ 「ほら、これ実はペア!二つの手を繋ぐとハートになっちゃうってやつ」 ちょっと得意気に見せてやると夏希ちゃんは何気に喜んでる顔を見せる。 「…でも…二つ持ってないと繋げないじゃん」 「……けっこう我が儘だね?」 確かにそうだと思ったあたしは、仕方なしに自分のキーホルダーも外して夏希ちゃんのキーに二つ付けてあげた。 「ラッキ!」 さっき男が何とかって言ってなかったっけか? ハートを作ったペアマウス手にして無邪気に喜んでる君は一体なに? そう心で投げ掛けながらも許してやることにした。 人の物を欲しがる姿になんだか四つ下の弟を思い出した。 年下なくせに「間に合ってる──」なんて気取ったこと口にするから生意気かと思ったけど何気に“さん”付けで呼んでるし…… 鼻歌唄いながら荷物整理する夏希ちゃんを眺め 「うん、問題ない」 この生活── 何とかやっていけそう。 あたしは自分をそう納得させることにした。
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