1章 出逢いは突然に

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・ でもほとぼりが冷めるまでって── 一体何があったんだろ? 芸能プロダクション社長の叔父を持ちながら、あたしは芸能関係に詳しくないからスキャンダルってのもわからないし… ほとぼりが冷めるまでは夏希ちゃんは外にもあまり出れず、うちに缶詰めだ。 「ただいま──」 「おかえり」 「あれ、何してんの?」 バイトから帰って台所にたっていた夏希ちゃんに声をかけた。 「冷蔵庫の食材借りてなんか作ろうかと思って」 「えーなになに、夏希ちゃん料理できちゃうんだ?へえー」 「前に料理のドラマやってた時に覚えた…」 単純に感動した。 回りを彷徨いて手元を観察しながら感心した声を上げるとなんか、はにかんで照れてる。 やっぱ何か可愛いな~コイツ! 「ねえ、なに作るの?」 あまり身長差がないお陰で肩に顎を乗せて甘えて聞いてみたら…… 「近いっ…」 「すぅぐ怒る…」 しょうがないから距離を置いて眺めた。 「食材使っていい?」 「いいよ」 離れたあたしに今一度確認する。 「ねえ…前から気になってたんだけど──」 夏希ちゃんは背を向けたまま訊ねてきた。 「……?」 「なんで本名で呼ぶの?」 材料を刻む軽快な音が耳に響く。 「いや?」 「嫌じゃないけど…子役からずっと聖夜で呼ばれてるのになんでか気になったから…」 「夏希って名前可愛いじゃん?あたし聖夜よりイケルと思うけどな?」 「………芸名は社長のセンスだから…」 「だね」 さりげない会話がなんかホントに弟と居るみたい。 短いやり取りをして一旦、自分の部屋で部屋着に着替え、あたしは上から軽くシャツを羽織った。
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