春に旅立つ白い花

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24年前、産まれた娘に梨花という名をつけた。 初めて梨の花を見たとき、真っ白な桜を見たような気持ちになった。 何色にも染まらないが愛される美しさ……というその時の印象を娘に投影した。 名前の影響か梨花は少し頑固な娘に育った。 正直もので自分を曲げず、とてもまっすぐな一面がある。 反面小さなことでもよく笑うところがとても愛しい。 そんな娘が連れてくる男に対する私の目はとても厳しいものになるだろう……と、覚悟を決めていたが、たった一人だけ娘が私に会わせた男はとても“いい奴”だった。 決して話がうまいタイプには見えなかったが、誠実な人柄がにじみ出ているようだった。
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