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「全然分からん、話せよ」
取材費を貰う以上、話さない訳にはいかず、観念して着物女との情事を話した。
「なるほど、まあ普通に考えれば毎日少しずつ純哉に近づいて、その日に到達し、夢に現れた......か、それから何か変わった事は?」
「別に、相変わらず擦る以外の音は聞こえるけど、それくらいだな」
「そうか......、しかし、その着物の女は何者なんだろうな? あのアパートの元凶なのか?」俺に分かるはずもなく、首をひねる。黙っていると、直樹が独り言のように喋りだした。
「夢の部屋の雰囲気は、──遊郭の部屋だな。蝋燭ってことは古い時代......照明は無かったんだろ?」
「ああ、無かった」
「と言うことは、──電気、普及......明治だから......それ以前」と、ぶつぶつと呟き、独りの世界に入って行く。こうなると直樹は長い。
「先に帰るぞ」と、一言いうと、直樹は片手をヒラヒラさせ、それだけで挨拶をすませた。
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