契り

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アパートから距離を置き、すぐに電話する。コール音がもどかしい──、8コールで間の抜けた声がした。「もしも~し」 「直樹か、でたぞ! やばいっ、マジででた!」 「なんだよ? でたでたって、また夢精でも──」 「ちっげぇーよ! 馬鹿野郎! ふざけてんじゃねーよ!」俺は恐怖を打ち消そうと怒鳴り声になってしまう。 「おいおい、なんだよ、どーした? とりあえず落ち着けよ、今何処だ?」 それから、近くのファミレスで落ち合うことにした。 「なるだけ急いで向かう、お前は深呼吸でもして待ってろ」 人と話すことで俺は、少し落ち着きを取り戻してきた。「怒鳴って──、悪かった」珍しく素直に謝る俺。 「ああ、じゃあ、すぐ行くわ」と電話を切ろうとする相手を呼び止める。 「ちょっと待て直樹、ついでに何か履くものを持ってきてくれ」 俺は、裸足で部屋を飛び出していた。
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