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「──なぁ、やってみない?」
酔客の声に負けないようにボリュームを2つほど上げて直樹は言った。俺は良く冷えた生ビールをのどに流しながら片手で奴の話を制す。ゴクッゴクッとのどを鳴らし一気に空けて、タンッとジョッキをテーブルに落とす。
「かぁ~旨い! 死んでもいい!」
お気に入りの居酒屋で飲む生ビール。最高だ! お通しの茄子の揚げ浸しニンニク醤油を一つつまみ口にほおりこむ。──これまた美味。
「で、何だっけ? 何の話?」ふたつめの茄子に手を付けながら俺は直樹との会話を戻した。
「だからぁ、呪いのアパートだって」メニュー表に目をやりながら直樹が言う。
「ああ、はいはい、──アパートね、そんで? 何で俺が住むの?」
「実はさ、次はホラーを題材で書きたいんだよね」
自称小説家の直樹。小金もちの家庭でニート暮らし。まあ、たまに家の仕事を手伝っているらしく、ニート呼ばわりすると結構マジで怒る。二十一歳にもなって定職にも就かず、フリーターで好きなことやってる俺も、他人のことは言えないけどね。
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