契り

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「幽霊のでる部屋には見えねぇなぁ」いつの間にか隣の洋室にいた直樹は部屋を見回しながら一人ごちた。 俺は身を起こしあぐらになる。 「お前の一人損になりそうだな」直樹は俺の隣に腰を下ろした。 「ああ、だが、火のないところに煙は立たねぇからな」と、不適な笑みを浮かべる。 「そういうもんかねぇ、──ところで調査って何をすんだよ?」 「んっ、ああ、特に何も、此処で暮らしていれば何か起きるだろう、それを、五日に一回程度、報告してくれ」 「そんなんでいいのか? カメラを仕掛けたり──」 「そんな物仕掛ける金はない」直樹はピシャリと言った。 「でも、何も起きなければどうする?」 「あまりに何もなければ、こっくりさんとか、ひとりかくれんぼなり、やってもらおうか」 「こっくりさんは分かるが、ひとりさくらんぼってなんだ?」初めて聞く言葉、疑問をぶつける。 「さくらんぼじゃねぇよ、かくれんぼ。降霊術の一種で、......まぁいいや、やる時に説明する」 「さてっ」と直樹は立ち上がる。 「そろそろ、親父のワンボックスが使える時間だ。さっさと引っ越しやっちまうか」大きく伸びをした。 男の独り暮らしだ、荷物なんてたかが知れてる。ワンボックスを二往復で事足りた。元々六畳一間の部屋の荷物も、一時間で片付いた。 住人への挨拶もすまし、二人で引っ越し蕎麦を食い、解散する頃には22時を回っていた。心地よい疲れの中シャワーを浴び、缶ビールを二本空け、その日はすぐに床に着いた。
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