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五日間の就労を終え、金曜の夜が来た。会社から帰ってきた俺はジャージに着替えて部屋を出る。
そしてマンションの入り口でスマホをいじりながら待っていると、着替えた三枝が階段を下りてきた。
外にぎりぎり出られるくらいのメイクにジャージ姿だ。
三枝は無表情とも言い難い表情で、
「行こうか」
と一言だけ言う。
俺は、ああ、と頷いて歩き出す。
そうして、徒歩三分のDVDレンタル屋に向かう。
店に入った俺たちは入り口近くのカゴを手に取り、先週借りた分のDVDを返却ボックスに入れて、映画のコーナーへ向かう。
映画を選ぶ俺と三枝の動きに迷いは無い。
目についたものを片っ端からカゴに入れていく。一度見たものだろうが、二度見たものだろうが、ジャンルが偏ろうが関係は無い。ただ欲望のままに、見たいものをカゴに放り込む。
話し合いなど無い。選ぶ時の制約は、土日の間に見られる分量。それだけだ。
選び終わった俺たちは、カゴをレジの店員に渡す。
流石に何年も同じことを繰り返していると店員も二十本を少 し超えるくらいの数を渡しても表情一つ変えない。
愛想笑いを顔に張り付けたまま、淡々とDVDをレジに通し、大きめの黒いカバンに借りられたそれを綺麗に並べて詰めていく。
言い渡された金額を俺が払う。
店員が清算をしている間に、三枝が俺にその半分の金額を渡してくる。
それを財布に収め終わったころに店員がレシートと黒いカバンをこちらに渡してくる。
俺はそれを受け取ると、続いてスーパーに向かう。
土日の間の酒と菓子と朝昼晩の食材を調達するためだ。
三枝が買い物かごを腕に下げて口を開く。
「今回、なんかグルメもの借りた?」
「分からないな。あるかも」
三枝は少し無言で考え込むと最適解を出す。
「……肉丼でいっか」
「ああ」
俺は頷いた。
野菜売り場でサヤインゲンを、肉売り場で鶏肉をカゴに入れる。
その後、菓子売り場、珍味売り場、酒売り場を経由して、支払いを済ませた。
マンションに戻ってきた俺と三枝はそれぞれ別れ、自室に戻る。
俺は三枝がいつも使っている側の長ソファの脇に借りてきたDVDを置いて、居間を出て、自室のベッドで眠る。
俺は恐らく、明日の六時半頃に朝日で起きるだろう。
そして、一ページ目の一行目に戻って、大体似たようなことを繰り返す。
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