とてもつまらない物語

10/12
前へ
/12ページ
次へ
──  「木こりの斧」を見終わるころには、俺たちはその日三杯目の酒を口に付けていた。  俺はベビーサイズの瓶に入った白ワインをグラスに注ぎ切り、三枝は映画に目をやったまま、グラスに浅く注がれたブランデーをちびちびと舐めている。  三枝がDVDを交換し、学園青春ものの「ぼくたちが大人になったなら」が再生される。  何の変哲もない学園ものだ。大人と子供の境目にいる高校三年生の男女五人のグループが、恋愛あり、ケンカありで最後の一年を過ごす。  爽やかさと、ほど良い青臭さの滲み出る作品で、見終わった後になんとも言えない爽快感と寂寥感を残す。  この映画は三枝のお気に入りで、月に一回借りてくるのでもう恐らく五十回は見ている。ディスクが擦り切れてしまい、DVDレンタル屋が一度入荷しなおしたのは、恐らく俺たちのせいだろう。  高校生たちの青春を良い年をした大人二人は酒とつまみを片手に鑑賞する。 ──
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加