会社(の)事情(第一話)「そら、エライコッチャ!」 の話

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会社(の)事情(第一話)「そら、エライコッチャ!」 の話

まえがき:  男の口の機能は元来食べるだけだが、女の口は食べるのとしゃべるのと両方いける。女は生き方上手で、耳から蒸気を出すなんて朝飯前だが、男は寡黙で助兵衛で生き方下手だから、鶏(にわとり)になる。  近年結婚しても三組に一組は離婚に到ると聞く。嘆かわしい。アーンと口を開けたら、皮をむいた蜜柑を入れて貰える位に女に愛されるには、男はどうしたらよいか?  1.女は両方いける  男の口の機能は元来食べるだけだが、女の口は食べるのとしゃべるのと両方いける。 私の配偶者は特におしゃべりで、少なくとも私の百人力は行く。ママさんバレーをやっている「三十八歳バツイチ子持ち」の私の女友達も、劣らずおしゃべりで、軽く三人前程度の存在感を示す。併せて身の周りには百三人の女がいるようなもので、寂しいと感じた事はない。  因みに、昔の私は超が付く寡黙な人間。大学も技術系学部だったし、本を読むのが好きなので、しゃべる必要がなかった。用事があれば、その内容については説明的に人と喋るけれども、用がなければ喋らない。要するに、雑談というのをようしないのだ。何をしゃべって良いか分からない。   女と会う機会が少なかったから、私の口下手は表面化しなかった。が、初めてのデートとなって、問題が深刻化した。初めて前の日から悩んだ。女といて何もしゃべらないとなると、喋らないというだけで雰囲気が不味くなるのを、経験的に知っていた。  オスの本能として、女を愉しませなくてはならない義務感を覚えた。考えた末、事前に雑談の準備を周到に行う事にした。例えば、明日姫路城に遊びに行く予定とすると、事前に歴史を調べて暗記した。デートでそれを上手く喋る為だ。単に説明するだけだと教科書みたいになるから、所々にユーモアや冗談を混ぜる工夫をした。本当はそうではないのに、「面白い人」だと錯覚させる作戦だ。 
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