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「聴く」という努力と忍耐に対して、多大な報酬を得た訳だ。良い夫婦関係には、愛情を絶やさない為に薪をくべよとか、思いやり云々とか色々難しい事が言われる。が、そんな手間を掛けなくても、ただ単純に夫が妻の話を、お仕舞いの「ピリオドまで」とことん聴くの一事で、万事が解決すると思う。ただ、「何ら口答えせずにーー」が大事。出来れば時々「エライコッチャ!」の合いの手を入れられれば、もうパーフェクト。
最近の私なんかテクは既に名人の域で、渓谷の奥から聞こえるうぐいすのさえずりみたいに、おしゃべりに「聞き惚れる」域に達している。この技術は案外応用範囲が広く、口説いてもなかなか落ちない女友達の「三十八・バツイチ子持ち昆布」をたぶらかすにも、有効な気がする。近々試してみよう。
「ながら族」を廃業した結果、「ながら」を平行してやれなくなった分、人生で多くの時間が失われ、寿命が短縮した気がしないでもない。が、良く考えてみれば、短縮したとて、なに、私の人生など寿命に代えて緊急にやらなければならない程の大事のあろう筈は無い。それよりか、六十を過ぎると、一日一日夫婦である事の方が、もっと大事な仕事である気がしている。
「ねえ、あなたーーー、話をしながらご飯を食べるのは、楽しみなものね」
完
比呂よし
次の話(章)へ続く
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