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初めて出来た彼氏に舞い上がっていた。
そんな自覚が持てるほどの経験はなく、瑠美は流されるように彼との時間を過ごしていく。
それが終わったのは交際一年目。記念日だった。
夕食を振る舞おうと、瑠美は時間をかけて食事を用意した。
唐揚げ、サラダ、スープなど。特にスープはこだわっていて、野菜を煮込み一から本格的に作ったコンソメスープ。
『お前、馬鹿じゃねえの?』
瑠美の住んでいる狭いアパートに、彼の声が響く。その時の引き攣った表情は忘れられないものとなった。
喜んでもらえると思っていた瑠美は、驚きと戸惑いで声が出せない。
『普通にレストラン行けばいいだろ』
『でも……』
『お前、重すぎる。もう、付き合ってらんねえよ』
激しく叩かれた古いテーブルが揺れ、料理が皿から飛び出す。まるでスローモーション。
自分で作ったものが簡単にテーブルから落ちるのを眺めていた。
最後に瑠美が見たのは、去っていく彼ではなくて零れるコンソメスープだった。
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