第0章

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いつも通りの5時間目。 昼食後の辛い時間に大嫌いな英語。私が英語を嫌いになったのはこの緒方先生のせいだろう。頭のいい生徒を贔屓しまくる反面、私みたいにできない子に対して物凄く見下す。それに機嫌がいい日と悪い日の態度が全然違うからそれも気に食わない。 今日は予習をしていないから緒方先生が何を言っているのか全く分からない。まるで宇宙語。 (こんな授業、全く面白くないんですけど。) 目線が合わないよう窓の外を眺める。 私は授業に関心がない。 絶対当てられたくない。 私はここに存在していない。 突然の地響きに思わず頭を抱えた。地震の時は机の下へ隠れろというけど、いざとなるとそう簡単には動けない。 なかなか揺れは収まらず、生徒の悲鳴が響き渡る。教室は大きく揺れ、歪んだ窓枠がガラスを割る。 (あ…、刺さる…。) 目をつぶって次に起こるであろう痛みに備えた。鋭いガラスの破片がブラウスを破りながら私の皮膚に――。 (刺さらない?) さっきまでの騒動が嘘のように静まり返っている。誰の声も聞こえない。 恐る恐る目を開くと、目の前にガラスの破片が浮いていた。 いや、違う。 辺りを見回すと逃げ惑う生徒達の静止画があった。恐怖に満ちた表情なのに、マネキンのように動かない。緒方先生は大きな口を開けて今にも何かしゃべりだしそうだ。 私はようやく理解した――時が、止まっている。
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