4人が本棚に入れています
本棚に追加
幸い、俺の仕事は自宅でする事が主で、週に一、二回程度、クライアントとの打ち合わせで外出するだけなので、ほとんどの時間、自宅で過ごすことができる。
紗英は健太郎にかかりっきりなので、家事全般は俺がこなしている。
若い頃から長いこと一人暮らしをしていた経験があり、その頃を懐かしんで楽しくやっている。
料理は昔からの趣味のひとつで、週に何度か本格的なディナーを作るのだが、その度に紗英は喜んでくれる。
煮込み料理の火加減を気にしながら、ソファーに座る紗英を見ると、健太郎を膝に座らせ手遊びをしている。
「そうだ、──紗英」
濡れた手をエプロンで拭う。
「誕生日会、舞ちゃん来てくれるって連絡があったよ」
次の土曜日は健太郎の三歳の誕生日。
そこで紗英の妹、舞ちゃんを誕生日会に招待したのだ。
事故当時、舞ちゃんは俺達夫婦を気遣ってよくこの家に来てくれていた。俺も当時はショックで何も手につかず、身の回りの世話を舞ちゃんがやってくれていた。
あの時の御礼もまともに言えてなかったので、それも兼ねてと紗英と決めた誕生日会だった。
「舞ちゃんと会うのも久しぶりだから楽しみだな」
俺は紗英の肩にそっと手をやった。
最初のコメントを投稿しよう!