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「……母さんはもともと、身体が弱かったんだ」
凛は窓から目を離して、俺の方に注意を向けた。
「俺を出産するときは、周囲から反対があったそうです。その忠告通り、俺を産んでからは特に病気がちになって、ほとんど寝たきりで、最終的には……」
脳裏で、母の最期の姿が蘇る。
つらい身体に鞭を打って、俺と一緒に出掛けた母は、最期――路上に倒れ込み、そこへちょうど車が通りがかって……。
「亡くなったのですね」
俺が黙っていると、代わりに凛が言った。
「……そう。俺を産まなければ――俺さえ生まれてこなければ、母さんは今でも生きていられたはずなのに……」
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