106人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫よ、凛。落ち着いて」
「でも……」
「怖がらなくていい。すぐに終わるからな」
親族たちに諭され、少女はためらいがちに頷く。
その小さな手に握られているのは、刃渡り二尺の日本刀。
伸長がわずか四尺ほどしかない七歳の少女にとって、それを扱うのは至難の業だった。
両手でしっかりと柄を握り、頭上に掲げ、その切っ先はまっすぐ足元へ向ける。
大きく開かれた少女の足の間では、一人の男が仰向けになっていた。
目鼻立ちのはっきりとした、二十歳頃の若者だった。
瞳の色は黒でも茶でもなく、およそ日本人のものとは思えない不思議な色をしている。
最初のコメントを投稿しよう!