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「この電車は最終電車となっております~お乗り遅れのないように…」
タッタッタッ
来たっ!彼女だ!!
いつも最終電車のアナウンスが流れる頃に、凄い勢いで走ってくる彼女。
髪は乱れ、息づかいも荒い必死な彼女を見て思わず笑ってしまいそうになる。
「ありがとうございました」
笑いをこらえ、改札を急いで通る彼女に僕がそう言うと、どんな時でも笑顔でペコッと頭を下げてくれる。
みんな1日が終わり疲れた表情で改札を素通りしていく中、彼女だけは違った。
丁寧にお辞儀をしてくれる彼女は素晴らしいなぁと思っていた。
彼女を最終以外の時間に見かけることもあった。
友達と楽しそうに喋っていても、改札を通る時は必ず僕に向かってお辞儀をしてくれた。
ある時は、今までにないぐらい凄い勢いで汗だくになりながら走って来て
「どうしてもホームにいる人に忘れ物を届けたいので、入れてもらえませんか??」
と頼まれたこともあった。
その時も、帰り際に笑顔で「ありがとうございます!」とお辞儀をしてくれた。
そんな彼女を最近ずっと見かけない…
どんなに最終アナウンスが流れても彼女の走って来る足音は聞えない…
今までは仕事を淡々とこなし、人に対して興味のなかった僕がこんなにも気になるなんて…
いてもたってもいられず、彼女と一緒にいたことのある子を駅で見かけた僕は、思わず話しかけてしまった…
どのくらい時間が経っただろう…
話を聞いた僕の目からは涙が止まらない…
彼女は病気で亡くなってしまったという
あんなに一生懸命な彼女が…
笑顔の素敵な彼女が…
僕の胸は苦しみで、はちきれそうだった
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