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「別に怖くねえし。でも、アンタ以外のαは嫌いだ」
「……あらま、オジサン慕われるのは嬉しいけど心配だなあ」
「あ、オッサンって認めた」
くっと笑いを噛み殺した瞬間、くしゃくしゃに髪を掻き混ぜられた。
安心できる大きな手。唯一信じられるα。
卒業したらもう会えなくなるなんて耐えられない。
「アンタみたいなαとなら番になってもいい」
大人しく撫でられながら目を細めると、和巳に額をベチンと叩かれた。
「……心配すぎる。とにかくいつ来てもおかしくないから、抑制剤は携帯するように。万が一の時は這ってでもここに来なさい」
「ん」
離れていった手が名残惜しくて自分で額を撫でる。
体が熱い。
湧き上がる反応を誤魔化そうと腰を上げた瞬間、足元が揺れた。
気のせいだろうか。
窓辺に立つとスチール枠の向こうで体育に励む学生たちの姿が見えた。
「若者たちは元気だな」
ひょいと後ろから覗き込んだ和巳がおどけて言う。
なんでもない一言なのに、年齢の違いを突きつけられたようで胸が軋む。
おかしい。感情の波が不安定で上手くコントロールできない。
動悸が激しくなり、体の中でぶわりと熱が膨れあがる。
棗は胸元を握りしめ、その場にずるずる崩れ落ちた。
「岩佐!? おい、大丈夫か!?」
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