まさかの夢

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「大丈夫かよ。体の具合が悪そうだぞ」  肌が灰色にくすんでいる。生気がなく不健康な痩せ方だった。後ろで束ねた自慢の長髪もパサついているように見える。 「刺されて死ぬ夢を見て以来、食欲がないんだ。今日が終わらないと安心できない。あと少しの辛抱だな」 「なるほど」  二十一時四分が過ぎたら、つまり無事二十一時五分になったら、乾杯をして、龍の新しい門出を祝わなくてならないな、と遼哉は思った。  中華屋を出た後、駅まで歩いてデパートに入り時間をつぶした。 「今日、おれたちがここにいることを、元カノは知らないんだよな?」  当たり前のことだが、一応遼哉は聞いてみた。 「知るわけがない。あいつと完全に切れてからは、一度も連絡を取ってないんだから。おれの行動を逐一チェックしてない限り、知られる心配はない」 「今の彼女は? 森さんは今日のこと知ってるのか」 「友達と会うとだけ言っておいた。遼哉の名前はだしてない。だから、今日おれたち二人が一緒にいるのを知っている人間はいないはずだ」 「それなら、今晩おれの部屋に龍を刺しに来ることはありえないってわけだ」  そういう理屈になるだろう。だからこそ、自分たちは今こうして二人で行動しているのだ。 「何事もなく二十一時五分を迎えらそうだな」  励ますように遼哉が言った。
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