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遼哉は携帯を見て、
「まだ四時間以上あるな。そこら辺をぶらぶら歩いて時間をつぶすか? このマンションの裏の通りに喫茶店もあるし」
と言うと、龍は首を振って、
「この部屋にいようぜ。今から外に出るのは怖いよ」
まだ安心できないのか、怯えた表情だ。
「わかった。無事二十一時五分を迎えられたら、その時は外へ出て祝いの夕食をすることにしよう」
龍が夢の中で携帯を見ていて、画面に表示されていたのが二十一時四分だった。時間の下に八月十日と出ていたのもしっかりと記憶しているという。
「普通はそんな細かいことを夢で見ることはないし、覚えているなんてさらにないはずだろ。でもしっかりと頭に焼き付いてるんだ。妹にこのことを話したら、『それは正夢だという証拠』だと言っていた」
一体何がそのことを龍に知らせてきたのだろうか。龍の中のある種の危機察知センサーなのか。それとも彼を守護する霊か。はたまた神か。実際は遼哉はそのどれでもない気がしている。つまり、正夢でもなんでもない、ということだ。元カノをゴミのように捨てた罪悪感が見せたに夢に過ぎない。ただそれだけのことだ。
「時間もあることだし、片付けてない荷物を整理するの手伝ってくれよ」
部屋の隅に手つかずの段ボール箱が数個重ねて置かれている。本や雑貨の類が入れてあるが、面倒なのでそのままにしてあった。
「よし。お礼方々手伝うよ」
二人は段ボール箱を開けていった。
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