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昼休みに学食で菊池遼哉(きくちりょうや)がから揚げ定食を一人で食べていると、同じ二年生の高橋龍(たかはしりゅう)がやって来た。龍はB定食の乗ったお盆を持っている。
「彼女と一緒じゃないのか」
遼哉が聞く。
「美咲がいるとまずいんだ」
龍は遼哉の向いに座った。表情と声にいつもの元気がない。普段は青春を謳歌する典型的な勝ち組大学生だ。外見もつやつやの長髪を後ろで束ね、細見で脚の長い体をすっきりとした服装でまとめた男前である。
大方彼女と喧嘩でもしたのだろうと思い、遼哉は黙っていた。
「相談があるんだ」
龍の沈んだ声。これは相当深刻な喧嘩なのだろう。別れる、別れないのレベルに違いない。
「まだ別れないほうがいいんじゃない。付き合って一カ月も経ってないだろ。彼女、かわいいんだし」
彼女のいない遼哉にとっては腹立たしいことだが、森美咲(もりみさき)は男子学生の間で評判の、丸くて小さな顔をした、しかし丸くて大きな目をした、可愛らしい女の子だ。
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