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「なんか勘違いしてるみたいだな」
龍が言う。憤(いきどお)っている様子だ。
「お前が浮気でもして、彼女を怒らせたんじゃないのか」
そう言って、から揚げを口に放り込んだ。
「浮気? なんでそういうことになるんだよ。おれ、まだ何も話してないだろ」
女好きの龍のことだからあれこれ考えずに遼哉はそう思ってしまったのだが、違うようだ。
「じゃ、なんなんだよ」
から揚げ定食を平らげる箸の勢いを止めることなく聞く。龍はまったくB定食に手を付けていない。
「夢の話なんだ」
「夢?」
彼女と一緒に寝ていて、以前付き合っていた女の名前でも寝言で叫んでしまったのだろうか。と、遼哉はどうしても女絡みで考えてしまう。それというのも、龍は森美咲と交際を始めるにあたって高校時代から付き合っていた彼女と別れることになった、という経緯があるからだ。高校からの彼女は絶対に別れないと強硬に言い張ったらしいが、何をどうしたのかとにかく強引に別れたということだった。龍は美咲に惚れ切っていた。
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