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「ふざけたこと言うな。おれは殺されるんだぞ。正夢っていうのは、何をどうしたって実現するものなんだ。それが運命だからな。おれの命日はすでに決まってる。二〇一七年、八月十日だ。死亡時刻は二十一時四分」
刺されてすぐに死ぬわけじゃないんじゃないか、と遼哉は思ったが、黙っていた。龍は真剣だ。おふざけはやめよう。
「わかった。だったらその時間、おれのマンションの部屋に来いよ。来月に引っ越すことになってるんだ。つまりそのマンションの場所を知っているのは、今のところおれと不動産屋だけだ。新しいおれの部屋に龍の元カノが来ることはありえない。運命を信じるお前はそれでも不安かもしれないけど、おれが一緒にいるよ。何かあったら力になれると思うぜ」
そんなくだらない夢が現実になるとは思わないが、遼哉は自分の部屋で龍と一緒にその時刻が来るのを待つのがよいと考えたのだ。
途端に龍の顔色が晴れていく。
「ありがとう。そう言ってくれて心強いよ。二人だったら難を逃れることができるかもしれないしな。恩に着る」
龍はそう言って、目頭に滲んだ涙を拭った。その姿を目にして遼哉はあきれてしまった。それほどまでに思い詰めていたのか。正夢なんてあるわけないのに……。
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