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「…………すみま…せん……」
フラれる……
オレ、フラれるんだ……。
そのためにわざわざ早起きしてアパートまで来て、待ちかまえていたんだ。
警察官に包囲されるよりも最悪だ。
人生最悪の日だ。
「……勢いで図々しいこと言ってごめんなさい」
「あのさぁ、ごめんごめんごめんってなんなの!?
とりあえず謝っとけばいいって思ってない!?」
千歳の真っ赤な瞳から、
涙がぼろっと溢れた。
透明な雫は、
あとからあとからとめどなく零れて、
やわらかな頬を濡らしてゆく。
ああ……
オレはいつもこの子を泣かせてばかりいる。
「泣かないで………悪いのはぜんぶオレ……」
「そーだよ!」
千歳は気丈にもにぎりしめた手で涙を払った。
涙は朝の空気に混じって溶けた。
「聞いてないもん……
私竜憧くんから何も言われてないもん。
竜憧くんの気持ち、ちゃんと言ってよ!」
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