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少女が光を失ったのは5年前だった。
しかも、最も残酷な形で視力は奪われた。
5年前の夏、家族旅行で海に行った帰り、居眠り運転のトラックに正面衝突されてしまったのだった。
4人が乗る乗用車は大破。
両親と弟が犠牲になり、彼女も脳の視床下部を損傷して視力を失った。
心の傷が癒えぬまま学校にも行かず、彼女は引き取られた叔父の家で時が過ぎるのを待つ生活を続けていた。
「美保、また手紙が来ているよ」
叔父の正孝が、朝食の時に美保に手紙を渡した。
あまり感情を表に出さない美保だが、顔が赤らんでいた。
「叔父さんは、美保がやっと明るくなってくれて嬉しいよ。これも、手紙のおかげかな?」
美保は、花のように微かに笑顔を綻ばせ、叔父に答えた。
「叔父さんには、いつも感謝してます」
「辛い気持ちも解るし、忘れろとも言えないけど、両親や弟のためにも強く生きて欲しい」
叔父は、いつでも美保を見守っていた。
朝食を終え、部屋に戻る美保。
家の間取りは、既に隅から隅まで記憶しているので、配置が変わらない限り、躓く事なく移動できる。
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