6人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で泣くの?」
私の目を見ながら困った表情を浮かべる隆にごまかしの言葉は浮かばなかった。
「先輩と付き合ってほしくなかった」
思わず漏れた本音に隆は驚いた表情を浮かべた。
「ちょっと待って。美弥子、俺たちのこと応援してたんじゃないの?」
「してた!してたよ。先輩いい人だなぁって思ったし。だから先輩に隆の個人情報もいっぱい教えた!」
「えっ!?個人情報!?」
「好きなサッカー選手も、好きな曲も、好きな映画も、お母さんのから揚げのことも、リンゴジュースが大好きでいっつもリンゴジュース飲んでることも全部!」
「あー……だからか」
すべてを納得したように隆は少しうなだれて見せた。
「私、好きとかもよくわからないし、先輩から隆の話を聞くと苦しくなるのは、友達が離れていく嫉妬かなぁと思ってた。
だからそんなの良くない、友達のこと応援しなきゃって。
でも先輩がズルしてたって知って……今、すごく悔しい」
思わずしゃがみ込んだ私に続いて、隆は体の高さを私に合わせた。
「ズル?」
「隆のこと……知らなかったって言ってたのに……」
ただ涙があふれる私を見て、隆はこれ以上話を聞くのは無理だとあきらめた様子だった。
最初のコメントを投稿しよう!