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「ねぇ、美弥子。美弥子は大きな勘違いをしている」
「えっ?」
「俺は、別にリンゴジュースが死ぬほど好きなわけじゃない」
そう言って、隆は手元のオレンジジュースのラベルを印籠のように私に見せつけた。
「えっ!?」
「これまた美弥子は覚えてないと思うけど……小学校の頃にね、うちの親がリンゴジュースとオレンジジュースを買ってきて「二人で分けなさい」って言ったんだよ。
美弥子、いつもオレンジジュースばっかり飲んでるから、答えは決まってるはずなのに、絶対それを口にしなくてさ。
俺が「リンゴジュースが良い!」って言ったら、パッと笑顔になって「隆くんはリンゴジュースが好きなんだね。私たち絶対喧嘩にならないね」って。だから俺は、美弥子の前ではずっとリンゴジュースしか飲まない」
隆が思っている以上に頑なな一面があることを、その日初めて知った気がした。
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