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「美弥子、もっと自分が欲しいものに素直になっても良いんだよ。美弥子が欲しいものなら、俺は全部美弥子のものにしてあげる」
「でも……私が欲しいものを選んだら、傷つく人がいる」
先輩の顔が頭にチラついた。
「美弥子は?美弥子は欲しいものが手に入らなくて、傷ついてないの?じゃあ、何で泣いてるの」
隆の目は、今まで見たことがないほど力強く見えた。
「言えない」
「言って?」
「言えない」
「お願い」
隆の声がどんどん優しくなっていく。
「隆が……いなくなるのが怖い」
「うん」
「隆が先輩と付き合うの、素直に喜べない」
「うん」
「隆のことが、好き。ずっと傍にいてほしい」
振り絞った言葉に反応するように隆は私の体をギュッと抱きしめた。
「美弥子の願いは全部叶えてあげる。俺は美弥子が気づくずっとずっと前から、美弥子のことが好きだった」
そっと体を離されて重ねられた唇は、ほんのりオレンジジュースの味がした。
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