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由香はどうも柏木先輩が苦手らしい。
だから由香の吐いた言葉が、携帯のケースに掛かっていないことは簡単に判断できた。
「柏木先輩、良い人だと思うけど……」
「それは、本気の言葉?それとも渡瀬の彼女だから?」
前の席に腰をかけ、私の顔をじっと見つめた由香はすべてを悟っているかのように私に問いかけた。
「どっちも」
「ふーん。私は美弥子に協力を依頼する時点で、相当嫌な女だと思うけどね」
「それは、隆と私が幼馴染だから……」
「本当にそれだけだって思ってる?」
「それ以外に何が……」
言いかけたところで、思わず言葉が詰まった。
「あっ渡瀬!携帯、理科室に忘れてたよ」
私の視線に気づいた由香が、隆に話しかけた。
「マジ?ありがとう」
「お礼なら美弥子に。渡瀬のだって気づいたの美弥子だから」
その言葉に反応して
「サンキュー」
と私を見た隆に、私はコクっとうなずきだけを返した。
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