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「おい、アレ・・・」
カメラはズームになり、その部屋の中央に人間の少女くらいの大きさのツインテールの女の子の人形が椅子に座っていた。人形が来ている服装はごく普通のTシャツにキュロットパンツ、靴はスニーカー。体型や顔立ちからして小学生3年生くらいのようだ。女の子の人形は顔こそ正面を向いているが、目は閉じられていた。
「たぶん居間じゃないと思うけど、どうやら僕たち、噂の人形とご対面ができたようです。さて、これから僕たちは噂の検証に入ります」
ムクが部屋に入り、女の子の人形に近づく。
「懐中電灯の光だけじゃよくわからないけど、よくできている人形みたいです。僕、こんな大きな人形みたことないな。これが動いたり声を出したり、て本当?」
ムクは人形に懐中電灯を当てたまま人形のそばまで行った。
「ムク、ちょっと話しかけてみて」
れんずが言った。
「何を?」
「たとえば、挨拶してみるとか」
「じゃあ・・・お人形さん、こんばんは」
ムクは人形の顔の高さまでかがむと人形に向かって挨拶をした。本当に人形が動き出すのかと緊張した空気が流れる。ムクたちはしばらく息を殺して待っていたが、特に何も起こらなかった。
「何だ、しょせんは噂だったようです。特に何もありませんでした。これで噂の検証は終わりです。それでは僕たちは急いでこの廃屋から出ます。家に帰るまでが遠足です」
「帰るまでが遠足って小学生かよ」
れんずが笑いながら言う。
「残念だけど俺はもういたくないな」
うぇちが安心した声で言った。
ムクは部屋を出ようと振り返った。
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