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カナコは公立高校に通う2年生だ。
夏も終わり、渡る風が軽くなり、皆は受験を意識し始め、お腹の空く季節。
もうしばらくしたら文化祭が行われ、その勢いで周りは浮き足立ち、そのうちに年を越し、最後の一年を迎える。
友人たちは勉強の傍らに部活や恋に遊びに、青春を謳歌しているようだが、カナコは違った。
姉が結婚した。
その時から、時が止まったかのように、同じ歌を繰り返している。
カナコ自身、自分はこのまま何もなく終えるのだろうと感じていた。
例えば数列前に並んで座っているカップルのように、肩を寄せ合い、微笑みを交わし会うだけで全てを知るような、そんな幸せなどは理解できないんだろう。
次の停留所のアナウンスに、カナコはボタンを押してゆっくり立ち上がった。
これが彼女の日常だった。
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