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カナコの脳が、やっと視界を認知し、音を理解し、状況を飲み込み始めた時、今朝は雨が降っていたこと、傘を持ってきていたこと、それを今持っていないことを悟る。 灰色の空は一日続く雨を約束していた。 湿度は高いが、気温は下り坂だ。 寝起きの体に冷気が染み込む。 そうして、二つの現実を思い出した。 目の前にいる見知らぬ男子学生。 カナコの学校の近くに、コンビニをはじめとする商店その他がない、という事実。 通学の学生はまばらで、雨はシトシト足元で弾けている。 カナコの背は低い方では無かったが、彼は少し見上げる程の身長で、湿気に遊ばれた短い髪の毛があちらこちらへツンツンしていた。 通った鼻筋を去り行くバスに向けている。 カナコはもうひとつ、気が付いた。
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