プロローグ

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プロローグ

 ───春。  俺は家の前を桜が舞い散る中、黄色い声を上げながら通りすぎていく学生服を身に付けている人達を窓から眺めて、そう確信する。  この風景は何だか新鮮なものだった。  毎日こうして見られる方が俺なので、こうやって見るとなんだか大人になった気分である。  それでも格好は通りすぎていく学生と同じ制服を着ているため、大人ではない。  勿論、自分でも大人ではないと思っている。  結構だらしない生活を休日では一日中してるのだ。  大人であれば最低限度で踏みとどまれることができる(?)のではないだろうか。 「翔(かける)兄ぃ~? お母さんが早く朝御飯食べないと遅刻しちゃうよだって~」  と、自室の扉の向こう側から可愛らしい妹の声が聞こえる。 「分かった! 今行く!」  そう声を張り上げると、妹は返事を確認したのか階段を降りる音が聞こえる。  俺もお腹が空いているので早く降りるとしよう。     
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