真実

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 ユリエルはその最前線に立ち、一瞬のうちに存在を示した。前方から槍を構えた兵を剣の一撃で討ち果たし、横から突き立てられた槍の先を切り落として落馬させ、そのまま止めを刺す。ユリエルは騎乗しても槍は使わない。愛用の剣一本で、戦場を渡る。  ユリエルは周囲を見回した。前線は予定通り、タニス軍が押していた。どんどん前線を引き上げていく。それを確認し、更に前線を上げるべく乱戦の中へと身を躍らせる。幾人もの敵を切り捨て、味方の死を近くに感じて、白い衣服を赤く染めて、ユリエルは単騎敵陣に切り込んだ。  無謀にも見えるが、そこはユリエルの力量だ。上手く馬を操る。そうして何十人目かのルルエ兵を地に伏せた時、不意に力強い馬蹄が聞こえた。それは明らかに、これまでの者とは違った。 「たぁ!」  ルルエ本陣を切り開くように現れたのは、目にも鮮やかな赤い装備の青年だった。まだ若いその将兵は槍を突きだす。ユリエルはそれを弾き、逆に相手の腕を狙った。だがそれは上手くかわされてしまった。  二頭の馬は馬首を返して向かい合った。戦場がそこだけ切り取られたように、二人の周囲が自然と開く。赤い騎士はユリエルをマジマジと見て、軽く口笛を吹く。感心したようだった。 「俺の一撃を弾いた奴なんて、久しぶりだな。あんた、何者だ?」 「人に名を尋ねる時は、まず名乗るのが礼儀ではありませんか?」     
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